キートンの蒸気船

　これは、チャップリン、ハロルド・ロイドと並ぶサイレント時代の三大喜劇王、バスター・キートンの代表的傑作。

　ミシシッピー川で操業している蒸気船ストーンウォール・ジャクソン号のオーナー、ウィリアム・キンフィールドは“スチームボート（蒸気船）ビル”と呼ばれている町の人気者。
　そのビルに、強力なライバルが現われた。金持ちのジョン・ジェイムズ・キングがピカピカの新造船キング号をつくり事業に乗りだしたのだ。
　そんな時、ビルのひとり息子スチームボート・ビル・ジュニアがボストンから戻って来て……

　この映画、クライマックスのハリケーンによる町の崩壊シーンと、その中を逃げまくるキートンのパフォーマンスによって、キートン映画の中でも特に知られている作品であり、あのミッキー・マウスのデビュー作「蒸気船ウィリー」がこの作品のパロディであるなど、正に映画史に残る１本として知られています。

　バスター・キートンと言えば、その憂いを帯びた無表情と、その表情を変える事無く行う身体を張ったアクションが特徴だけど、こうしてあらためて観るとそのアクションは凄まじい。
　スタントなし、勿論、ＣＧなどある訳もない、特殊効果だってごく限られたもので、コレか……なるほど、ジャッキー・チェンに影響を与えた、と言うのにも納得だし、そのジャッキー・チェンでさえ及ばない部分があるのが判る。
　特に、立っているキートンの背後から倒れてくる倒壊した建物。あわや下敷きかというところをちょうど窓の部分に立っていて助かる……と言うカットなど、スタッフにも緻密な計算と高い技術が求められる。これを淡々とやって見せる所がバスター・キートンの凄みであることをあらためて確認しました。　
　

　（２０１９年　８月２５日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

チャールズ・Ｆ・ライズナー

　■出演

　スチームボート・ビル・ジュニア　・・・　バスター・キートン
　
　スチームボート・ビル　・・・　アーネスト・トーレンス
　
　ジョン・ジェイムズ・キング　・・・　トム・マクガイアー

（その他のキャスト）
　トム・ルイス　　マリオン・バイロン

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