アンダー・ユア・ベッド
Under Your Bed

　これは、大石圭の同題ホラー小説を「氷菓」の安里麻里監督が映画化したもの。

　人との関わりを持たず、社会からもその存在を無視され続けてきた孤独な青年・三井直人は、1１年前、大学生の自分のことを名前で呼んでくれた千尋のことを不意に思い出し、彼女の自宅を探して、訪ねて行く。
　千尋は結婚をし、既に子供もいたが、三井が目にした彼女は見る影もなくやつれていた――あんなに輝いていた千尋がどうしてそうなってしまったのかを知りたくなった三井は、彼女の自宅の近くに観賞魚店を開き、彼女を監視するようになる。そして、その行為は徐々にエスカレートして……

　これは、社会から無視され続け、空気のようになっていた男の物語。
　三井には存在感がなく、それを利して千尋にストーキングして見つめ続け、果ては彼女の自宅のベッド下に潜んで夫婦の営みの様子を伺う、と言う、インモラルな展開となるのが大石圭ならでは。
　この三井の「見る」と言う行為を、一方的に「見る」存在である観賞魚（水槽の中からは外はガラスの反射で見えません）を扱う、と言う職業に重ねる描写も凝っています。
　また、これも大石圭らしく、女性へのサディスティックな性描写も満載……千尋が夫から受ける暴力描写は、ＳＭプレイなどと言うレベルを超え、凄まじいと言えるほどです――韓国映画ならともかく、日本映画でここまで女性を痛めつける描写がある映画も珍しいのではないでしょうか。
　これだけ見るとサディストの夫と、変態ストーカーにつきまとわれる女、と言う救いようのない展開ですが、この物語、終盤において感動のクライマックスを迎え、これが実はメロドラマであった事を明らかにします。
　正に男心のツボを突いたとした言い様のない、見事なまでの純愛ラブストーリーなのです。

　そんな純愛の対象となるヒロインの千尋を演じたのは「私は絶対許さない」の西川可奈子。相変わらずの脱ぎっぷりのよさ、「私は絶対許さない」では中学生を演じた童顔と、演技の幅を生かし、溌剌とした大学生と、ＤＶでやつれた主婦をひとりで演じて見せ、これは文句なしでしょう。
　その反面、三井役の高良健吾は、三井と言う存在感のない男を演じるにはいい男に過ぎ、目力もあり過ぎる感じ――「愛がなんだ」もそうでしたが、女性監督が選ぶと男のレベルが上がるような気がします……　
　

　（２０１９年　８月１７日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

安里麻里

　■出演

　三井直人　・・・　高良健吾

　浜崎千尋　・・・　西川可奈子

　浜崎健太郎　・・・　安部賢一

（その他のキャスト）
　三河悠冴　　三宅亮輔

　■コピー

覗いていたい。
　　このままずっと――

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