シークレット
スーパースター

　これは、「きっと、うまくいく」のアーミル・カーンが製作・出演した人間ドラマ。
　出演は、「ダンガル　きっと、つよくなる」のザイラー・ワシーム。監督・脚本は、アーミル・カーンの元マネージャーで、本作が監督デビュー作となるアドヴェイト・チャンダン。

　１４歳の少女インシアの夢は歌手になること。しかし、ムスリムで厳格な父は、イスラムの教えから女が社会的に活躍することを望まず、歌手になる事など出来そうにない。実際、母は些細な事で父から日常的に殴打されており、インシアが歌手になろうものなら殺されかねない。
　そこで彼女は、ヒジャブで顔を隠して歌った動画をYouTubeにアップする。顔を見せない彼女の歌声は、たちまち評判となり、落ち目の音楽プロデューサー、シャクティ・クマールとの出会いをもたらすが……

　この映画は、歌手を夢見る少女を描いた青春映画であり、同時に、インド社会で抑圧されている女性の苦しみと、その箍を打ち壊して行く若い才能を描くもの。
　インシアは、顔を隠して歌う、その歌声だけで話題となり、やがて有力者の助力を得、弁護士を雇って暴力的な父と離縁すべく、母の離婚手続きを進めて行きます……そんな少女のサクセスストーリーを描いて、歌と踊りもしっかり、スーパースターであるアーミル・カーンもしっかり存在感を見せる娯楽作だけど、そこに、歪められた宗教の導きや、家父長制的な家庭で生まれるＤＶ、女性や少女の人権へのメッセージが含まれて、良心的社会派作品となっているのはさすがです。

　気になるのは、家父長制な家庭像やＤＶ、女性の地位の低さなどがムスリムに関連付けられそうな辺り……自身もムスリムであり、女性や子供の地位向上につとめる活動にも貢献しているアーミル・カーンは勿論自覚していると思うのですが……　
　

　（２０１９年　８月１２日　イオンシネマ港北ＮＴにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

アドヴェイト・チャンダン

　■出演

　インシア・マリク　・・・　ザイラー・ワシーム

　シャクティ・クマール　・・・　アーミル・カーン

（その他のキャスト）
　メヘル・ヴィジュ　　ラージ・アルジュン　　ティルス・シャルマ

　■コピー

私には、歌がある。

［戻る］