ドラゴンクエスト
ユア・ストーリー

　これは、名作ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの「ドラゴンクエストV　天空の花嫁」を、「ＳＴＡＮＤ　ＢＹ　ＭＥ　ドラえもん」の山崎貴が総監督・脚本を手掛けて３Ｄ・ＣＧアニメ化したもの。　
　監督は、「ＳＴＡＮＤ　ＢＹ　ＭＥ　ドラえもん」で監督を務めた八木竜一とアートディレクターの花房真。

　魔物たちから妻を取り戻そうとしたパパスは、息子リュカの前で殺される。その１０年後、「天空の剣を手に入れれば魔物を倒し、母を救うことができる」というパパスの日記を発見したリュカは、父の遺志を受け継ぎ、再び冒険の旅に出るのだった。
　リュカの行く手にはいくつもの試練が立ちはだかり、更に、幼馴染ビアンカと大富豪の娘フローラという２人の女性のどちらかを伴侶に選ぶかと言う人生の選択を迫られる。果たしてリュカの冒険の先にあるものとは……

　この映画、冒頭、かつての粗いドット絵のゲーム画面から始まり、それがリアルな３Ｄ・ＣＧに展開することで、ゲームの中にかくも豊かな“世界”がある、と言う事を印象づけて始まります……これは、ゲーム「ドラゴンクエスト」の世界に夢中になった人をわくわくさせるであろう展開であり、正に、そんなファンが心に抱いていた自分が愛する“物語”（だからこそ、作者が「あなたの物語」だと言うのです）を見せてくれるのだ、と――実は「ドラゴンクエスト」をプレイした事がない自分にとっても、これから展開される物語に期待をさせるものでした。
　ただし、その後の展開は、ゲームをやり込んでいた人向けであろう、設定や背景を省略したものとなっていると共に、展開の早い場面とじっくり描く場面、その理由も把握出来ずで、正直、自分自身、作品世界を理解出来ているかは怪しくはありますが……
　
　ただ、本作の最大の問題、と言うか、議論を呼んでいるのは、終盤、クライマックスの“ラスボス”と対峙してから。その正体と、そこからの展開――これには正直面食らいましたが、私も「劇場版エヴァンゲリオン」を観ていたりするので、ショックを受ける程ではありませんでした。
　ただし、「ドラゴンクエスト」のファンにとっては、あれは許容出来ないものでしょう……せっかく、これまでゲームを通して作り上げて来た“物語”を見せてくれた、と思っていたのに、そこで「これは作り物の世界の事だから」とやられては……これは、ファンの怒りまで呼び起こしてしまったようで、この映画の評価が低いのは、そんな、触れてはいけない部分に触れた、と言う所があるからだ、と思います。
　私は、職人芸で映画を作るけれど、決して、その作品を深く理解しているとは思えない山崎貴（ここが、作品を深く愛して手掛ける庵野秀明との差異でしょう）がやってしまいがちな悪癖が出たものと思います。
　結果、これは「ドラゴンクエスト」ファンが観れば怒り出し、そうでなければ仕掛けを面白がる事は出来ても、物語が判らない――これは観る人がいない、と言う事になるのではないでしょうか？　
　

　（２０１９年　８月　３日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■総監督・脚本

山崎貴

　■出演

　リュカ　・・・　佐藤健

　ビアンカ　・・・　有村架純
　フローラ　・・・　波瑠

　パパス　・・・　山田孝之

（その他のキャスト）
　坂口健太郎　　ケンドーコバヤシ　　安田顕　　古田新太　　松尾スズキ　　山寺宏一　　井浦新
　賀来千香子　　吉田鋼太郎

　■コピー

君を、生きろ。

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