よこがお

　これは、「淵に立つ」の深田晃司監督によるヒューマン・サスペンス。
　主演は、「淵に立つ」に続き、深田監督と再タッグを組む筒井真理子。共演は市川実日子、池松壮亮、吹越満。

　初めて訪れた美容院でリサは、美容師の和道を指名する。後日、和道と、偶然会ったふりをして、近所だからと連絡先を交換するリサ――そうして和道との距離を縮めていくリサの本名は市子であり、献身的な仕事ぶりで厚く信用されて来た訪問看護師だった。
　かつて、そんな市子が担当する大石家の次女サキが行方不明となり、逮捕された犯人は市子の甥に当たる人物だった。
　大石家の長女、基子の勧めでその事を伏せていた市子だが、やがて事実が発覚。事件への関与を疑われた市子は、基子の裏切りとも思える発言によって追い詰められ、築き上げた生活の全てを失ってしまったのだ……

　これは、愛と憎しみを描くドラマ――そのふたつの感情は、決して切り分けられるものではなく「可愛さ余って憎さ百倍」とも言われるように、容易に反転したりもします。
　この映画では、引きこもり、人間関係に歪な部分のある基子に、市子が翻弄される物語なのですが……連想したのは、松本零士の短編マンガ「復讐を埋めた山」。このマンガにもあるように、人は、理性では勿論、感情でさえも、行動を抑止得ない。反射で、はずみで、思わぬ行動をし、思わぬ結果を招いてしまうのが人間なのです。
　この映画では、不安や嫉妬から、思わず大事な人を貶めてしまった基子、そして、そんな基子に再会した市子が無意識にしようとした行為に、それが描かれているように思いました。　
　

　（２０１９年　７月２７日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本・編集

深田晃司

　■出演

　白川市子 / リサ　・・・　筒井真理子

　大石基子　・・・　市川実日子

　米田和道　・・・　池松壮亮

（その他のキャスト）
　須藤蓮　　小川未祐　　吹越満　　大方斐紗子　　川隅奈保子

　■コピー

ある女の
ささやかな復讐。

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