きみと、波にのれたら

　これは、「夜は短し歩けよ乙女」、「夜明け告げるルーのうた」の湯浅政明による長編アニメ。
　声の出演は、ゼネレーションズの片寄涼太、元ＡＫＢ４８の川栄李奈。

　海辺の街へ越してきた大学生のひな子は海とサーフィンが大好きで、波の上では怖いものなし。そんなひな子は、火事騒動をきっかけに消防士の港と恋に落ちるが、港は海の事故で命を落としてしまう。
　大好きな海が見られなくなるほど憔悴したひな子が二人の思い出の歌を口ずさむと、水の中から港が現れる。
　ひな子は港との再会を喜ぶが、彼が再び姿を見せた本当の目的は……

　「夜明け告げるルーのうた」が国際的には高く評価された湯浅政明ですが、国内興行的には満足行くものではなかったようで……そこで、次作となる本作は悲恋のラブロマンスを軸に、ひとりの女性が人生の波にのる物語としました。
　物語的には「よくある話」に落ち着き、湯浅政明的には独自の映像世界も希薄となりましたが、それも商業的には仕方ない事なのでしょうか……

　もっとも、吉田玲子脚本による物語はなかなか感動的で、基本は幽霊譚で、主人公が死を乗り越える「喪の物語」でありながらも重くなり過ぎる事もなく、ファンタジックにまとめられ、最後にはじんわり胸が熱くなる、いいドラマだと思います。

　港を演じた片寄涼太は、ゼネレーションズとして本作の軸となる思い出の歌「Ｂｒａｎｄ　Ｎｅｗ　Ｓｔｏｒｙ」も担当。尚、本作は音楽を中心としながらも、様々なアレンジでこの１曲で映画１本をカバーしました。
　でも、本作で最も目立っていたのはひな子を演じた川栄李奈で、彼女は上手い、と言うか上手過ぎます。本当に才能あるなぁ、と感心……憧れの女優はＡＫＢ４８での先輩に当たる大島優子、と言う事ですが、演技では既に超えているのではないでしょうか。　
　

　（２０１９年　６月２１日　ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）

（作品データ）

　■監督

湯浅政明

　■出演

　向水ひな子　・・・　川栄李奈

　雛罌粟港　・・・　片寄涼太

（その他のキャスト）
　松本穂香　　伊藤健太郎

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